NASA の管制センターの専門家のように、プロジェクト・マネージャーはさまざまな側面を追跡して、チームがインシデントなしでプロジェクトを実施できるようにする必要があります。NASA が宇宙船を管理するのに対し、プロジェクト・マネージャーは成果物を監視します。
リーン方式は、アポロ 13 号の大惨事に類似する、プロジェクト管理の災害を防止するのに役立ち、プロジェクトを予定どおり、かつ予算内に提供できます。
リーン方式では、リソースと労力を最適化し、チームが効率的かつ効果的に作業できるようにすることで、段階的な調整プロセスを継続的に促進し、製品デリバリーを大幅に加速します。
この記事では、リーン方式の詳細、そのメリット、ソフトウェア・チームが Jira によってリーン方式の原則を実装する方法について説明します。
リーン方式の歴史
リーン方式は、継続的な改善によってチームのプロセスと成果を完全に最適化することを目的としています。リーンがうまくいくと、チームは顧客に効率的に価値を提供できます。
トヨタの創設者である豊田喜一郎氏は、資源を節約して無駄を排除するために、第二次世界大戦後にリーン方式を開発しました。スーパーマーケットでの商品の購入と補充の作業を見た後に、豊田氏はジャスト・イン・タイムのコンセプトを思い付きました。これは、まさしく顧客が必要な時に製品を製造することに焦点を当てています。
豊田氏のコンセプトは、トヨタ生産方式へと変わり、最終的にリーン方式となりました。リーンは、こうした小さな始まりからアジャイル・プロジェクト管理の基盤へと発展しました。ソフトウェア開発、建設、医療など、複数の業界が現在リーン方式を利用しています。
リーン方式の概要
リーン方式は、継続的な改善と人間性の尊重という 2 つの柱に基づいており、リーン・プロジェクトすべてに枠組みを提供します。
- 継続的な改善:継続的なフィードバック・ループにより、チームはプロセス、製品、人員に対して段階的に変更を加え、システムを継続的に改善できます。既存のプロセスやシステムを一度に 1 つずつ特定・評価・変更することで、チームは無駄をなくして、全体的に効率を向上させられます。
- 尊重:マネージャーは、チームの貢献や顧客からのフィードバックの価値を認識し、彼らのインサイトやアイデアを真剣に受け止めます。リーン・マネージャーは、ワークフロー全体で最も効率的な方法で作業を配分し、緊密なコラボレーションを促して、顧客にもたらす価値を最大化します。
リーン方式の基本原則は、上記の両要素を考慮して開発されました。
リーン方式の原則
自身の業務が顧客エクスペリエンスに与える影響を考慮することが重要です。リーンの 5 つの基本原則により、チームはタスクを整理でき、プロジェクト・マネージャーは監督できるようになります。この 5 つの基本原則は次のとおりです。
1. 価値を特定する
顧客に価値を提供するには、まず顧客のニーズを理解する必要があります。次の方法でこれを実行できます。
- 顧客と直接関わり、顧客の問題点について学ぶ。
- 製品でそれらの問題点を軽減する方法を特定する。
次に、顧客のニーズを満たすために製品の価値を定義し、これをチームに伝える必要があります。そのためには、チームの作業が顧客エクスペリエンスに与える影響を考慮して作業を構成し、最適なツールを調査して、チームが顧客に価値を提供できるようにします。
価値を特定して、チームが顧客に付加価値を提供する機能のみを確実に構築することで、時間と費用を節約できます。
2. バリュー・ストリームをマッピングする
質の高い顧客エクスペリエンスを提供するために必要なアクティビティが、バリュー・ストリームの一部を形成します。バリュー・ストリーム・マッピングでは、図を利用してプロジェクト・プロセスを視覚化し、バリュー・ストリーム管理を支援します。これは、無駄をなくすためには非常に重要です。
バリュー・ストリーム・マッピングには次のようなアクティビティがあります。
- 問題を特定し、適切なチームを選ぶ:顧客の主な問題点を特定したら、それらの問題を解決するスキルを持つチームを選びます。
- プロセスの範囲を制限してマッピングする:プロジェクトのスコープを必要なアクティビティに限定します。その後、Jira のスクラム・ボード・テンプレートを利用してプロセスをマッピングし、成果物ごとの日付を設定できます。
- データの収集:チームがプロジェクトに費やす時間などのデータを追跡することで、必要なリソースを把握します。
- 評価と調整:継続的にプロセスを改善するには、常にプロセスを評価して、「これを行うための、より適切な方法はあるか?」という質問を問い掛けます。
3. フローを作成する
フロー状態とは、時間の経過に気づかないほど、チームの作業が順調に進んでいて軌道に乗っている状態です。フロー状態を作り出すと、チームのやる気とパフォーマンスが向上します。
チームのフローは、バリュー・ストリームの効率に反映します。その効率は、継続的なフィードバック・ループを利用して絶えず微調整できます。リーン方式では、遅延を減らし、ハンドオフの回数を最小限に抑えるために、スムーズで継続的なフローが必要になります。
「リーンを実装するときはフローに集中します」と、アトラシアンの Modern Work Coach を務める Mark Cruth は語ります。「フローは、無駄の削減、サイロの解消、継続的な改善など、リーンの各要素の中心であり、すべての要素がフローに戻ってくるのです」
次を実施することで、チームのフローを改善できます。
- 部門横断型のコラボレーション:サイロ化はリーンの弱点です。チームはプロセス全体に参加し、必要に応じて他のチームとコラボレーションしてタスクを達成する必要があります。たとえば、そのために、カスタマー・サクセス・チームに最新情報を提供し、顧客の問題点に関する意見を取り入れることが必要になる場合があります。さらに、チームは、他部門の運営方法について知識を深めることができます。
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タスクの追跡:カンバン・ボード、または Jira のカンバン・テンプレートによって、タスクの割り当て、作業の視覚化、チームの調整を行えます。これらのカードは、チームがプロジェクトのライフサイクルを通じてタスクの進捗状況を追跡するのに役立ちます。
4. プル・システムを確立する
プル・システムを利用して、チームは必要なタイミングで顧客が必要とすることのみに取り組み、予測ではなく、実際の顧客の需要に基づいて生産します。
顧客のニーズを正確に評価するには、チームは顧客と話し合い、意見を求める必要があります。
5. 完璧を追求する
リーンには成長の考え方が必要であり、継続的な改善を通して完璧を目指します。継続的なフィードバック・ループを利用して、プロジェクト・マネージャー、チーム、企業は無駄を減らし、効率を高めることができます。
リーン方式のメリット
プロジェクト・マネージャーは、関係者のフィードバックを待つなどして、プロジェクトを一時的に中断したことが 1 回や 2 回はあるでしょう。フィードバックを受けるのが遅すぎると、プロジェクト全体が行き詰まってしまいます。リーン方式には、このような障害を軽減する多くのメリットがあります。次に例を示します。
- 効率の向上:バリュー・ストリームをマッピングすることで、顧客のニーズを中心にして作業に集中し、顧客が求めていない製品やサービスに関する不要な作業をなくすことができます。
- 問題の減少:リーンは、コミュニケーションの欠如や非現実的な締め切りなどの問題を、深刻な問題になる前に軽減します。リーンでは、コミュニケーションに関して、追跡と透明性を提供するため、全員がタスク、責任、締め切りを明確に把握できます。チームは、より密接にプロセスに関与するため、非現実的なタイムラインを押し戻すこともできます。
- コスト削減:明確な計画を立て、障害を取り除くことで、顧客の需要を満たす分の生産を行い、コストを削減できます。そうすれば、必要以上の在庫を生産することがなくなります。これは、物理的な製品には特に重要なことです。
- 顧客との関係の改善:顧客価値を重視することで、顧客とより強固な関係を築くことができます。これはビジネスには非常に重要です。
- 継続的な改善:リーンの継続的なフィードバック・ループによって、プロセスを改良して継続的に改善し、効率的に価値を提供できます。
- チームによる取り組み:リーンでは、チームが直接的に関与する必要があるため、チーム・メンバーは成果にさらに取り組むようになります。メンバーは自分たちが取り組んでいるタスクや、タスクを完了する時期について意見を述る機会があります。権限を与えられたチームは、積極的に関与します。
リーン方式の潜在的な課題
リーンには多数のメリットがありますが、リーンを実践する際には、プロジェクト・マネージャーが認識し、克服すべき課題がいくつか生じる場合があります。これらの課題には次のようなものがあります。
- 管理サポートの欠如:管理サポートがないと、リーン・チームが崩壊する可能性があり、障害になり得ます。
- 解決策:できる限り早急にチームの賛同を得て、リーンがどのように役立つかをメンバーに提示します。
- トレーニングが不十分:トレーニングが不十分であるチームは、成果に悪影響を与える可能性があります。チームがリーンのプロセスを把握していなければ、そのプロセスをチームが容易に活用することなど期待できません。
- 解決策:チームのオンボーディングを行う際は、リーン方式に関する十分なトレーニングを提供します。チームをリーン認定資格プログラムに登録し、実地トレーニングを受けてもらうことができます。認定資格を得れば、チームがリーン方式に関する適切な知識を持っていると確信できます。
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文化ではなくツールに重点を置く:人ではなくツールを優先させると、チームのやる気が低下します。リーン方式でツールに重点を置くと、人間性が奪われ、チームや作業の価値が低下する可能性があります。チームは尊重されていないと感じると、最善を尽くさなくなる可能性があります。
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解決策:リーンの継続的な改善の考え方を利用して、信頼の文化を築きます。継続的にフィードバックと成長の機会を提供して、マネージャーであるあなたがチームのキャリア開発に関心があることを示します。
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- 指標を重視していない:リーン方式でのチームの改善には、指標が重要です。
- 解決策:指標に注目してプロジェクトの成功を測定し、改善点を見つけてチームを発展させます。
Jira をプロジェクト管理に活用する
リーンにより、無駄をなくしてプロセスを継続的に合理化することで、プロジェクト管理を加速し、チームのアジャイルを保ちます。
Jira は、ソフトウェア・チームがリーンを維持し、より多くの顧客価値を提供するのに役立ちます。コンテキストに応じたインサイトにより、チームは作業方法を継続的に学習および改善する力を備え、トレーニングできます。スクラム・ボードとカンバン・ボードは、最短の時間で最大のアウトプットを継続的に提供できるように、チームが次に取り組むべきことを完全に可視化します。Jira をコラボレーションのバックボーンとすることで、すべてのチームがお互いに、および組織の他のメンバーと足並みを揃えることができます。
また、Jira により、エンタープライズはバリュー・ストリームを視覚化できるようになります。これにより、エンタープライズは次のことが可能になります。
- プロセス・フローの自動化を設定する。Jira の強力な自動化エンジンにより、チームの時間を節約し、手作業を減らします。作業をビジネス・ニーズに合わせます。戦略目標に向けた日々の作業の進捗状況を確認し、既製のアジャイル・レポートによって重要な関係者に情報を提供します。
- 投資を追跡する。任意のプロジェクトで使用されているリソースや費やされている時間を把握して、次のプロジェクトに適切な労力を割り当てることができます。
- 障害を見つける。潜在的な障害を特定し、発生する前に防止します。
- 継続的に価値を提供する。明確性が向上し、インサイトを得られれば、チームは顧客や会社全体に着実に価値を提供できるようになります。
このソリューションは、アジャイル、Open DevOps、バリュー・ストリーム管理など、他の方法にも適しています。
リーン方式:よくある質問
アジャイルとリーンの違いは何ですか?
一見、リーン方式とアジャイル方式を区別するのは難しいように思えます。どちらも効率と顧客価値を重視していますが、プロジェクト管理のさまざまな面に重点を置いています。リーンでは無駄の排除、プロセス、価値の提供に重点を置いているのに対し、アジャイルでは顧客、不確実性の軽減、実用的なソフトウェアの提供に重点を置いています。
では、順番に解説していきましょう。
- 焦点:トップダウンのアプローチとして、リーンではプロセスの改善を考慮します。しかし、アジャイルはボトムアップのアプローチであり、作業をより小さいイテレーション・ループに分割します。
- 製品デリバリー:リーン・チームもアジャイル・チームも迅速に取り組み、できる限り早く製品を提供しようとしています。しかし、アジャイルではスピードよりも、フィードバックをより重視しています。そのため、アジャイル・チームは小規模に構築し、フィードバックを得て、反復します。リーンでは、プロセス全体を改善することを重視し、より迅速に提供できるようにします。
- フレームワーク:リーンには特定のフレームワークはありませんが、アジャイルにはあります。スクラムとカンバンは、アジャイル・プロジェクト管理の 2 つのフレームワークであり、アジャイル原則を適用できます。プロジェクト・マネージャーがアジャイル方式を始められるように、Jira には、スクラム・テンプレートとカンバン・テンプレートが用意されています。
DevOps とリーンの違いは何ですか?
DevOps では、開発チームと運用チーム間の職務上のコラボレーションを実現して、ソフトウェアをより迅速に提供できます。DevOps の核となる考え方は、認識とコラボレーションの文化を通じて、ビジネスに継続的に価値を提供することです。
対照的に、リーンの核となる考え方は、プロセスの改善と無駄の排除を通じて価値を提供することです。
リーンと DevOps は顧客中心の方式ですが、主に次の 2 つの点で異なります。
- 顧客価値:DevOps では、顧客の共感イメージ・マップを作成し、ビジネス目標を顧客価値に組み入れます。リーンでは、ニーズに基づいて顧客に価値をもたらすアクティビティを選択します。
- 焦点:DevOps では、ドキュメントとコラボレーションによって開発と運用を統合します。リーンでは、プロセス、リソース、労力を最適化します。
さらに、DevOps ではプル・リクエストなどの日常的なタスクを自動化します。DevOps の初心者向けガイドでは、この内容に関して詳述しています。
DevOps をすでに利用している場合、Open DevOps(オープンツールのアプローチと自動化を備えた Jira が提供する、すぐに使える DevOps の基盤)によって、アジャイル・チームは高品質のソフトウェアのリリースと運用に集中し、DevOps の原則に関連する「構築した者が運用する」を確実に実践できるようになります。
アジャイル、リーン、DevOps を同時に利用できますか?
はい。これらの方式は、顧客に品質と価値を提供するという点で互いに補完し合っています。DevOps では、サイロ化を解消し、開発チームと運用チームを統合します。アジャイルでは、継続的な改善を促します。リーンでは、継続的な改善の理想を実践します。
3 つの方式すべてを利用すると、製品デリバリーがスピードアップし、顧客価値が向上します。たとえば、あなたの会社では 3 つすべてを利用していても、連携していない可能性があります。リーンはアジャイル・プロセスの改善に役立ちます。また、アジャイルの反復的アプローチは、リーンの継続的な改善に役立ちます。DevOps を利用すると、部門間のコラボレーションを改善できます。
3 つの方式すべてを活用すれば、あなたの会社は最強の企業になり、より効率的なプラクティスによって、顧客に価値を提供できるでしょう。
アトラシアンのプロジェクト管理ツール・スイートを使用して、これらの方式を関連付けることができます。